独立起業を考えるとき、多くの人が「収入がサラリーマン時代の2倍、3倍になった!」というような成功話に心を引かれます。確かに、それは素晴らしい成果であり、起業が大きな収入増の可能性を秘めているのは事実です。
しかし、そういった”おいしい話”ばかりに目を奪われ、現実的なリスクを見落としてしまうと、必要以上に大きな資金を投入してビジネスの重圧に押しつぶされることもあります。
起業の甘い誘惑に踊らされるのではなく、自らのビジネスを冷静にコントロールするための大切な要素をお伝えします。
魅惑的な宣伝に注意し、地に足をつけた目標設定を
「起業して安定収入を得ましょう」「明るい未来を手にするには起業しかない」といった広告をよく見かけます。最近では「社畜からの脱却」など、どう考えても経営者が使わないような言葉を使い、お金儲けを煽るような情報を発信している人も多くいます。
しかし、実際には起業しなくても安定収入を得たり、充実した生活を送ることは十分可能です。そして反対に、起業したからといって明るい未来が保証されているわけでもありません。
ただ、起業家という道を選んだのであれば、収入を増やし、生活をより豊かにしたいという願いは自然なものです。
しかし、その過程で退職金や蓄えをつぎ込んだものの、思うように成果を出せず、生活が苦しくなってしまうという悪循環に陥るケースは少なくありません。
このような状況に陥らないためには、初めて起業する人であっても、しっかりとポイントを押さえれば、家庭を支えるだけの収入を得ることは十分に可能であるということを理解しておくことが大切です。
起業の初動として心に刻むべきこと
独立起業をする際に最も大事なことは、仮に「家族を路頭に迷わせないために起業する」という動機を持ったのであれば、それを忘れないことです。
特に最初の段階では、無理に高い収益目標を掲げる必要はありません。例えば、年収3,000万円を目指すことよりも、まずは家族が安心して生活できるための毎月30万円の収入を得ることが第一歩です。
月収30万円が多いか少ないかという話ではなく、家庭に必要な収入、つまり家族の損益分岐点を理解し、それをまずはクリアすることを目標に設定しましょう。これは派手な成功を追い求めるのではなく、家族を安心させるための基盤を作ることを優先するということです。
多くの稼ぐ系の広告や情報には「月収100万円以上!」という謳い文句が見られます。確かに魅力的な数字ですが、いきなりその水準を目指すことは現実的ではありません。
まずは、「家族を路頭に迷わせない」という現実的な目標を持ち、その達成に向けた行動を取ることが最も重要です。
スモールビジネスに徹する重要性
長年サラリーマンをしてきた人にとって、独立起業は「大それたこと」あるいは「賭け」と感じるかもしれません。また、自分の手でお金を稼ぐということ自体、なかなかイメージしづらいものかもしれません。
しかし、起業においては、サラリーマン時代のように「会社に行けば給料がもらえる」という考え方は通用しません。自分の手でお金を生み出すこと、そのリアルを理解することが大切です。
ただ、私は思うのです。これまでサラリーマンとして働き、様々なストレスや人間関係を乗り越えてきた経験があるのであれば、ビジネスのやり方さえ理解できれば、ひと月30万円や50万円程度を稼ぎ、その収入を維持することは十分可能です。
疑問や不安は尽きないかもしれませんが、独立起業において最も重要なポイントは「スモールビジネスに徹する」ということです。
スモールビジネスとは、少ないリソースで確実に収益を得ることを目的とし、大きなリスクを避ける形で事業を進めるスタイルを指します。この基本方針を守ることで、家庭を支えるのに十分な収入を得ることができるのです。
ニッチビジネスを選択する
ニッチビジネスとは、大企業が手を出しにくい隙間市場を狙い、少ない競争の中で独自の強みを発揮することができるビジネスです。
特に、特定のニーズに焦点を当てた商品やサービスを提供することで、少数でも熱心な顧客を獲得することが可能です。たとえば、特定の趣味やライフスタイルを持つ人々に向けた商品、またはローカルなニーズを捉えたサービスを展開するなどが効果的です。
大きな市場規模を持つビジネスを細分化すると、必ずニッチな市場を見つけることができます。
例えば自動車産業は非常に大きな市場規模を持ちますが、自動車産業を支えるには多くの会社が存在します。そこには町工場もあるでしょうし、材料を卸したりする会社もあるでしょう。
もちろん色々な設備がありますので、設備のメンテナンスなども必要となるでしょう。このように大きなビジネスを支えるには、そこに関係する数多くの企業や人や物やサービスが存在しているのです。
初めからニッチビジネスを探そうとする人がいますが、簡単に見つけることはできません。ニッチビジネスは大きな市場の中に存在するからニッチなのです。
だから、市場を細分化していくことで、ビジネスチャンスを発見し、独自のサービスを展開していくことが可能となるのです。
現実的な目標と手段を選択する
起業を目指す際に重要なのは、具体的で現実的な目標と手段を選択することです。以下に、独立起業にあたって意識しておくべきポイントを整理します。
- まずは家族の生活を支えることを優先:大きな収益を追い求める前に、家庭に必要な最低限の収入を確保することを目標としましょう。
- スモールビジネスに徹する:大規模な投資や過剰なリスクを取らず、小さく始めて、徐々に事業を拡大していくスタイルを心がけます。
- スキマ市場を見つける:大きな市場規模を持つビジネスを細分化すると、必ずスキマの市場が存在します。そこをうまく見つけられればビジネス成功の確率は一気に高まります。
これらの基本的な考え方を持ち続けることで、独立起業後に安定した収入を得る道筋が見えてきます。また、小さくスタートして得られる収入が安定的に確保できるようになれば、そこからさらに事業を広げたり、新しいビジネスチャンスに挑戦するための余裕も生まれてくるでしょう。
まとめ:独立起業の幻想に惑わされず、堅実に歩む道を選ぶ
独立起業には夢や希望がつきものです。しかし、魅力的な成功話にだけ目を奪われず、地に足をつけてビジネスを進めることが重要です。
まずは家族や自分の生活を支えることを最優先にし、スモールビジネスで安定収入を得ることから始めましょう。その堅実な一歩一歩が、長期的な成功と豊かな生活をもたらす道へとつながっていくのです。
「派手さ」を求めるのではなく、「堅実さ」を追求することで、最終的に満足のいく成果を手にすることができるでしょう。まずは小さく始め、確実に家族を守り、次第に新たな挑戦へと踏み出していくことが、成功への最善の道となるのです。
この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!
この記事を書いた人 Wrote this article
Hiroaki Nakamura 起業家・ビジネス書作家
新規事業創出・ニッチビジネス・スモールビジネス構築を得意とする起業家/ビジネス書13冊出版(関連書籍含)。複数の事業展開の経験を持ち、現在は新規事業創出支援、設備メンテナンス事業、人材育成・組織開発支援と、異なる業種3社を経営。特に放置自転車問題とビジネスを掛け合わせた発想や手腕をはじめ、最小の労力で最大の結果を生み出す独自のスモールビジネス構築法に業界内外から注目を集める。