「起業=リスクを冒す」というイメージを持つ人がいますが、それは誤解です。実際には、起業とは「リスク、責任、行動を自分で管理する」ことです。
責任や行動の管理というのは、どのような基準で行動に移すか、また責任の所在はどこにあるのか。といったことを意識している人は実は多くありません。
本記事では簡単に、リスク管理についてお伝えしますが、リスクを管理するというのは、ヒト、モノ、カネをはじめ、ビジネスを展開するうえで考えられる危険をはらんだ要素ということですね。
特にスモールビジネスで危険性をはらむ要素とは、ヒト、モノ、カネなど複数ありますが、全て最終的にはお金にからんできます。ここでは漠然とで良いので、お金の流れを感じながら読み進めてください。
ビジネスを始めるときのリスク管理
まずは、ビジネスを始めるときのリスク管理について話しましょう。
以前、私は着物リサイクルビジネスを始めまた時、最初は本当に売れるかどうか全くわかりませんでした。この状態でいきなり店舗を出すのはリスクが大きすぎます。そこで、私はイベント販売を繰り返して、“売れるかどうか”を確かめることをしました。
結果、売れるということがある程度わかりましたが、それでも完全に確信が持てなかったので、店舗をかめる前に、着物を保管していた倉庫の一角を使って販売しました。
イベントや倉庫で売ってみた結果、収益化の道筋が見えたので、ようやく専用の店舗を出すことに決めました。
つまり、利益がでるという事実を集めていき、勝負をしても負けない状況を作るまで、大きなリスクは取らないようにしたのです。
「利益が出てから店舗を出す」というのは、リスクを最小限にする方法です。最初から大きな投資をせず、売上を早く回して利益を生むことでリスクを抑えています。たとえビジネスがうまくいかなくても、リスクを抑えることで、お金の心配を少なくすることができるのです。
人に頼らないことがリスク管理になる
次は、人に関するリスクについてです。人のリスクとは、「その人がいなくなると仕事が回らなくなる」ということです。
特別な技術が必要だったり、特定の資格がないとできないビジネスは、人に大きく依存してしまうので、ビジネスが滞るリスクが高いです。
例えば建設業などで、特定の重機を扱う免許を所持している従業員が退職してしまったら、業務に大きな支障が出てしまうでしょう。また飲食店で調理師資格を持っている従業員が退職してしまったらお店の営業をストップせざるを得ません。
この例は必ず資格が必要な職種なので、極端に聞こえるかもしれませんが、誰かに頼り切ってしまうことのリスクというリスクという意味では、わかりやすいのではないかと思います。
だからこそ、リスクを薄める必要があるのです。
これは中小企業では良くある話ですが、社長がトップ営業という会社は少なくありません。しかし、社長は営業だけしているわけにはいかないので、常に営業をし続けるわけにはいきません。また仮に営業パーソンが一人しかいない場合などは、その人のモチベーションで会社の行く末が決まってしまうかもしれません。
営業パーソンが複数名いたとしても、トップセールスが多くの売上を作っている場合は、特にリスクはどんどん高まっていきます。なぜなら、トップセールは報酬が多いところに転職したり独立することが多いからです。
一人の営業マンの気分や動向によって会社が危機にさらされてしまうなんて、これほどのリスクはありません。
ツールやネットや営業など複数の接触点を作る
私が行った放置自転車の撤去ビジネスでは、最初は営業をおこなっていました。
そこで、「営業に頼らない仕組み」を作りました。その結果、営業経験のない新入社員でも、アルバイトでも放置自転車の撤去依頼を取れるようにしたのです。
仕組みといってもこの時に用いたツールは、「チラシ」や「インターネット」の活用でした。これらを活用して自動的に依頼が来るようにしたのです。
もちろん、ビジネスモデルや戦略によって営業パーソンが必要な場合もあるでしょうし、営業パーソンがいたほうが良いことも多いです。
実際私は他のビジネスでは営業をおこなっています。ただ、そういう時はできる限り人の能力やモチベーションによって成果に変化が出るやり方は避けるようにしています。
簡単に言うと、お客様と接触する一番初めの営業電話はトークスクリプトを作成して外注にお願いをしています。私はこの最初の接触がその後の営業成績に直結してくると考えているため、トークスクリプトは私自身が作成しています。
話がずれてしまいましたが、いずれにせよ、現在はリアルの営業に代わる多くのツールが提供されているので、初めから営業ありきでビジネスを考えるのではなく、営業も使いながら他にも何かお客様と接触するポイントを増やして、収益を上げられる方法がないかを考えることは大切だと思います。
逆にインターネットやツールを中心とした売り方が得意な人は、営業を用いた売り方を覚えると非常にビジネスの幅が広がります。
リスク管理が強いビジネスを作る
「お金のリスク」とは、例えば、売上げを他人に委ねてしまうということですね。どこかの会社の下請けや営業全てを外部に委託しているなど、お金の入り口を自分でコントロールできないビジネスはリスクが高くなる傾向が非常に強いです。
先にお伝えしたように、私は営業電話を外注しています。しかし、トークスクリプトは私が考えたものを使用してもらっています。これは何を意味するかというと、「作業は外注、思考は私」ということです。
これを、営業はよくわからないからと、そのすべてを外注に頼りきってしまうと、自社に何の知見も残らず、永遠に外注を使用し続けなければなりません。外注もビジネスですので、収益性の高い取引先にリソースを割かないとも限りません。
もし、外注が「もっと金額をあげてください」といってきた場合、断ることは難しくなりますし、「辞めます」と言われてしまったら、営業の知見がないのでノウハウを活用するできずに収益悪化に道を辿るしかなくなってしまいます。
これは大きなリスクととらえることができるでしょう。だからこそ、リスクの所在はどこにあるのかを常に意識して把握しておく必要があるのです。
リスク管理を徹底すると、ビジネスは「収益性が高く、人に頼らず、確実にお金を生むモデル」になります。そして、それがシンプルなビジネスモデルになります。これが私の考えるスモールビジネスの基盤です。
スモールビジネスの未来: リスク管理で道を切り開く
スモールビジネスの成功は、リスクを正しく管理することから始まります。起業は、大きな夢や無謀な挑戦ではなく、リスクをうまくコントロールし、最適化することです。その結果として、確実に稼げるビジネスモデルが生まれます。
「起業にはカリスマ性や壮大なビジョンが必要だ」と思ってしまうかもしれませんが、実際には「しっかりとリスクを考えて行動すること」、「お金をかけずに小さく始めること」、そして「リスク管理がビジネスの基礎であること」を理解することが重要です。
最後に、スモールビジネスでは「リスク管理こそがビジネスの基盤を作る」ということを覚えておいてください。確実に稼げるビジネスモデルを作るためには、まずリスクを取り除き、しっかり管理することが大切です。そうすることで、シンプルで効果的なビジネスが見えてきます。
リスクを管理することは、一見地味で退屈に思えるかもしれませんが、その先にあるのは強いビジネスです。
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この記事を書いた人 Wrote this article
Hiroaki Nakamura 起業家・ビジネス書作家
新規事業創出・ニッチビジネス・スモールビジネス構築を得意とする起業家/ビジネス書13冊出版(関連書籍含)。複数の事業展開の経験を持ち、現在は新規事業創出支援、設備メンテナンス事業、人材育成・組織開発支援と、異なる業種3社を経営。特に放置自転車問題とビジネスを掛け合わせた発想や手腕をはじめ、最小の労力で最大の結果を生み出す独自のスモールビジネス構築法に業界内外から注目を集める。