資金の回収に時間がかかれば、それだけリスクも大きくなります。したがって、スモールビジネスでは現金がとにかく大切。
起業したての頃は現金の流れを把握するのはむずかしいものですが、しっかりとした基盤を作っていくためにも資金は必要です。
入ってくるお金はもちろん、出て行くお金についても、どのように把握して回転させていくべきか、そのノウハウをお教えします。
資金の回転はスピード感が大切
資金の回転スピードとは「現金化までの時間」です。「在庫の換金までの時間」といえば、少しわかりやすいかもしれません。
BtoB(取引相手が企業)の場合は、入金が2か月後や3か月後ということもありますが、どんなに長くても30日サイクルになるように交渉するべきです。
また、カード決済などで30日後に入金という場合がありますが、カード決済の取り扱いが多いなら、もっと入金スピードを早くできるように交渉するか、入金スピードが早い決済会社に乗り換えても良いかもしれません。
とにかく手元にお金が入るまでの時間を短くすることです。
起業して初めのうちは現金を高速で回すことが基盤づくりになります。「起業して間もないから、お金の話をするのはちょっと気が引ける」というより、起業して間もないからこそ、現金化までの時間を短くする必要があるのです。
交渉するときは、「まだ立ち上げたばかりで、手元の資金が足りないとやりくりが大変なので、決済を早くしてください」と話す方が相手も受け入れやすくなります。
資金は出て行く分についても考える
ちなみに、起業したての頃やあまりビジネスがうまく行っていないときは、支払いは先延ばしにせず、そのつど払うことをおすすめします。
ビジネス書などでは、よく「お金は先にもらって、支払いは先延ばしにしろ」などと書かれています。
確かに、それはある意味では正しいのですが、起業したばかりの頃はお金の流れが把握できていません。だから、支払いを先延ばしにすると、まだお金が残っていると錯覚してしまうことが多々ありますし、残高だけみると変な安心感が出てしまいます。
ですので、例えば、4月の経費は翌月に払うのではなく4月のうちに払うようにして、買掛のないまっさらな状態で次の月を迎えるようにする方が良いのです。
そもそも、立ち上げ当初はやらなければならないことが多いのに、支払いのために月末を銀行でつぶしてしまうようなことや、買掛を作って経理をややこしくする必要はありません。
そんなヒマがあるのなら、支払うモノはとっとと支払って、お金を生み出すことに注力しましょう。一見もっともそうな常識にまどわされないでください。
資金を回転させるには、まず現金化
次に在庫の現金化までのスピードです。
在庫はいつでもお金に変えられるようにすることが非常に大切です。
着物リサイクルを例にすると、着物は在庫としてお店に置かなければ、お金に変えることはできません。
リサイクルビジネスの良いところは、売れ残りでもお金にスグに変えることができる点です。
リサイクルという市場は業者専門のオークションが存在します。したがって、売れ残りの商品をそのオークションに出せばお金に変えることができるのです。
当店ではお客さんから買い取った着物を販売しています。
高く売れる着物はオークションに出すよりも高い金額で売れるので、粗利も多く取れるのですが、最悪売れ残ってもオークションに出せば現金化される仕組みになっています。
基本的に買取り金額はオークションで取り引きされている金額が相場になるので、オークションに出しても赤字にはならないのです。
新品で商品を仕入れて売る一般の小売業の場合は、在庫はセールで叩き売るか、リサイクル業者に仕入れ値よりも安い価格で引き取ってもらうしかありません。
リサイクル業者に引き取ってもらうと、例えば1000円で仕入れた物を100円で持って行かれるなんてことが当たり前なので、みすみす赤字になることはやりたくありません。
とはいえ、セールで全ての在庫を売り切るのは大変ですし、セールをひんぱんにおこなえば利益を圧迫する原因となります。
その場は現金化することはできても、商品がなくなれば新しい商品を仕入れなければならないので、その売上げは次の在庫に変わるだけです。
次の商品に変えることができるだけまだマシですが、それは単なる利益の先送りです。いつまでたっても経営がラクにならないスパイラルにハマってしまう可能性が非常に高くなります。
どちらにしても、在庫を持つと、「現金化から利益の落とし込み」までのスピードが悪くなる要素が多くなります。在庫を持つビジネスをおこなうのであれば、この「現金化から利益」までの出口と流れを考えることが必要です。
資金の回収スピードが遅いと、どうなる?
ちなみに、私がおこなう放置自転車ビジネスでは、撤去してきた自転車を基本的には輸出業者にその場で売ってしまいます。在庫は持ちませんし、即金で手元にお金が残るので、非常に優れたビジネスモデルといえます。
とにかくスモールビジネスでは現金が大切です。
赤字でも現金があれば何とかなります。なので、現金でのやり取りを行うように心がけましょう。もちろん、手形は扱わないことも大切です。
資金の回収が遅いビジネスでは、支払いから入金までの間にタイムラグが発生します。給料の支払いに加え、税金の支払いのためにも借り入れをしなければならないなどの状況に陥ってしまうことも考えられます。
こうなると、何のためのビジネスか、誰のためのビジネスかわからなくなってしまいます。
また、投資した金額を回収するまでに時間がかかるビジネスも危険です。
例えば、顧客獲得に10万円かけて、その回収が半年後というビジネスはどこかでひとつ歯車が狂ったら一瞬でパーです。
使ったお金はすぐに回収できるようにすることがスモールビジネスには欠かせません。
お金だけに限りません。ビジネスをする上では時間の概念を持つことも重要です。
「時は金なり」といわれますが、スモールビジネスにとって「時は命」です。
スモールビジネスでは、現金化まで時間がかかる、資金の回収が遅い要素を改善できないビジネスモデルには手を出してはいけません。
「資金の回転スピードはとにかく早く」まとめ
手持ち資金は何より大切。投資や仕入れに使った資金の回収に時間がかかるビジネスモデルには手を出してはいけない。